『ギ・あいうえおス -ずばぬけたかえうた-』 "Gui aiueo:S"
バンドで音楽を演奏するように、映画を撮る…
ギ・あいうえおスはバンドである。
ギターやドラムなどの楽器は持たず、映画制作のツールを用いて音楽のように映画をつくる。
それがギ・あいうえおスの活動である。
いま、ギ・あいうえおスは最初の旅に出た。
ロケ車でありバンドワゴンである「くじら号」に乗って、音を録り、画を撮り、行く先々の空間や人々と交わる。
これは、エピソード0である。
ギ・あいうえおスは、旅に出たばかりだ。世界を奏でるために…
本作は、愛知芸術文化センターからの依頼で制作された映像作品であり、必ずしも<映画>のフォーマットに落としこむのではなく、より自由な映像表現を試みることがテーマであった。
しかし、柴田は企画段階から<映画>であることにこだわった。
その結果、映画制作クルーが映画を制作してゆく過程を、音楽を演奏するバンドと同等のものとして描くという核が編み出され、結果作品の制作者(スタッフ)がイコール登場人物(キャスト)であるという、あたかもロバート・クレイマーを彷彿とさせる独特の形態をともなうこととなった。
「くじら号」を疾駆させ、各地を訪れ、その土地の人々や事物との交流を映像と音響で記録してゆくこと。
これが軸となり、フィクションとドキュメントの融合が果たされるとともに、本来であれば整えられ制御されて観客には届けられることのない音と映像のあられもない<ノイズ>が、ギ・あいうえおスの採集活動のままに観客の前に差し出され、浮き沈みを繰り返す。
やがて<ノイズ>が何かを予期し、形を伴い始める。
そう観客が感じられた瞬間、それはギ・あいうえおスが世界を奏で始めた瞬間なのだ。
様々なジャンルのアーティストを独自の視点から1年に1作家をセレクトし、“身体”を統一テーマにボーダーレスな映像作品が制作されてきた。
そのシリーズの平成21年度作家として柴田剛が選出され、シリーズ第19弾として『ギ・あいうえおス -ずばぬけたかえうた-』(2010年)が完成した。